えびちゃんの山行記録
弥山川から幻の名瀑「双門滝」へ
仙人グラ前のテラスから望む双門滝
日 付 |
平成13年 6月 9日(土)〜10日(日) |
ルート |
1日目: 行者環トンネル西口〜行者環林道〜熊渡〜弥山川沿い〜双門滝〜 河原小屋〜聖門滝〜(ビバーク) 2日目: (ビバーク)〜狼平〜弥山〜奥駆道〜分岐〜行者環トンネル西口
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天 候 |
曇り時々晴れ (夕方から次の日の昼頃まで濃霧) |
概 要
奈良は大峯山系の弥山にその源を発する弥山川を遡行する山行は落差60mを誇る「双門滝」をはじめ数々の渓谷美を楽しむことができますが、近年その登山道は荒れ果てしばらく通行止めとなっていました。 風の便りによると、ようやくその登山道も整備され通行禁止が解除されたらしいのですが、圧倒的に情報が少なく、それではいっちょ調査を兼ねて歩いてこようと、またまた無謀な計画を立てたえびちゃんに、稲村キレット直登行よりも激しい運命が待ちかまえていたのでした・・・・。 結論をいうと、双門滝を見るためだけに半ば強引に作られた登山道を辿るのに必要な時間を、その見かけだけの距離で計算してしまうと、想像よりも距離が伸びないので、折角の素晴らしい景観を楽しむ暇がなくなるということでしょうか?また普通の登山道では決してありませんし、歩けそうな場所を見つけながら岩のゴロゴロした川岸を時には飛び石しながら遡行?する技術が必要ですので、間違ってもこの山行記を読んで軽い気持ちで、弥山川コースを単独テント泊行で行こうなどと考えないでください(^^; ということで今回の山行記は脚色を押さえて、できるだけ正確な記録でお届けします。いやお届けできればいいですな〜。できるかな?
11:15 熊渡(くまわたし)を出発
弥山コースの登山口にあたる熊渡に重たいザックをデポして、車で行者環トンネル西口まで行くと、さすが休日!車がいっぱい止まっていました。行者環トンネルは現在工事中で通行不可(工事している光も見えました)ですので、これらはすべて弥山・八剣山へ登っている人の車でしょう。さすが近畿最高峰の山だけはあります。ここからは空身で熊渡まで戻ります・・・が、うわぁ〜時間かかりすぎ〜(x_x) 結局登り始めが昼前になってしまいました・・・まあ大丈夫でしょう!今日は狼平までの予定なので・・・日没も7時過ぎだし・・・・これが悲劇の始まりだったのですが、このときは何も気づきませんでした。(ガイドブックのコースタイムが7時間であったことも・・・・・)
11:50 弥山川に降りる
林道分岐から弥山川に降り立ちますが、水は流れてません。石の河原(八丁河原)の下を水は流れているのでしょうか?これが本当に弥山川かちょっと不安になります。 しかし、しばらく遡行すると石の隙間に少しずつ水たまりが現れはじめ川らしくなってきました。ただし泳いでいるのは、オタマジャクシのみ、池じゃなくてもオタマジャクシは育つんですね〜。水の流れが弱いためなのでしょうが、元気なやつは川の流れに逆らって泳いでいます。なんか感動(;_;)!
12:20 第1の滝に到着
川の流れがはっきりするとまもなく第1の美しい滝(釜滝)が姿を現しました。ここからは向かって左側の岸(右岸)に登山道があります。谷沿いの人工的な巻き道を歩きますが、数カ所に架けられた橋は一部崩れ、もし歩いている最中に崩れたら10m以上落下して谷底一直線です。橋を信用できない高所恐怖症の人はまずいかも?
13:30 一の滝、二の滝(小双門滝)
しばらくすると、再び谷に降り立ち、今度は向かって右側の岸をよじ登って行くと立派な吊り橋に到着します。ここから見える滝が一の滝、二の滝(小双門滝)で、何も知らない人はこれが双門大滝と勘違いしてしてしまうかも・・・・。 私もてっきりこれが双門滝と勘違いして写真を撮りまくって、おまけに滝口までよじ登って遊んでしまいました。あぁ〜後で考えるとこれが第2の悲劇で30分以上のタイムをロスしてしまったのでした。登山口のコース案内板をしっかり見ていれば、こんな事にはならなかったのですが・・・・
15:25 双門大滝(仙人グラ前のテラスから)
三の滝からは岩壁に張り付けた垂直の梯子を何本か登って一気に高度を稼ぎます。天気が良ければ最高の眺めなのでしょうが、かろうじて稲村ヶ岳や登ってきた谷(白川八丁)が見えるだけでした。 なんかおかしいな?もしかしてさっきの滝は、双門滝ではなかったのか?だんだん大きくなる水瀑の音が不安をかき立てますが、不安的中!目の前にさっきの滝とは比べものにならない、圧倒的な大滝が現れたのでした・・・・。 ここまでの「どう考えても強引でしょう!」という垂直梯子は、この滝を見るためのものだったのです。ホント昔の人はよく、こんな細い絶壁と痩せ尾根にルートを築いたものです。ただし双門大滝の素晴らしい姿よりも、4時間以上かかって、まだ双門滝までしか到達していないという事実がえびちゃんに感動よりも焦りの念を植え付けてしまったのでした。
双門滝から上のルートはさらに荒れていました・・・・。ここまでは、ルートが分からなくなることは無かったのですが、ここからは最近整備されたらしい道以外、ルートすら定かでありません。さらに、大滝からはなぜか道が迂回するように(危険な区域を迂回するため?または双門大滝口に行かせないため?)いったん迷ヶ岳の尾根にあがってから、谷に下っていくので(やめて〜;;)、疲労が倍増します。唯一、名も知らぬピンクの可憐な花(イワカガミです:貴公子さん、dameさん談)だけが心を和ませてくれました。
17:50〜18:05 河原小屋
濃い霧の中を谷沿いに遡行していくとやっと河原小屋が見えてきました。 \(^^)/ヤッター!そっと窓から中を覗くと・・・ 「ひ〜、ぜっ全裸の男性が〜!やべ〜、関わりにならんとこ・・・」 見なかった事にして、あたふたと上流へ進みますが・・・・ 濃霧で道が分からなくなり、いつの間にかずるずる崩れる右岸を歩く羽目に・・・・テープもなし・・・暗くなってきたし(このまま歩くと稲村の時のように谷底に滑り落ちてしまうかも?)、やっぱり引き返そう(;_;)・・・・しぶしぶ小屋に戻るとさっきの男性は服を着ておられた「ほっ(^^)助かった。。。」。どうやら、さっきは水浴びをしてたらしい。(それぐらい今日は蒸し暑い) おじさんの話によると、「ここから狼平までは後1時間ちょっとで、左岸沿いに行けばテープもあるので迷うことはなく、道は平坦だし、狼平の避難小屋は素晴らしい」とのこと。それに比べると「この小屋は暗くてだめだ〜」などとしきりに僕に先へ進むことを勧める・・・(河原小屋は立派に整備されてます)。どうやら僕にこの小屋に泊まって欲しくないらしい? そこまで言われると、少しばかりのプライドがムクムクと・・・・・まあ、後は平坦なら「行ってやろうじゃあ〜りませんか!」・・・と時間は気にりますがさらに前進してしまいました・・・・・(第3の悲劇)
「おやじ〜!ぶっ殺すぞ!!」そんな気分でした。(野蛮ですみません、でもホントそんな気分でしたので・・・) 話とは全く逆で狼平までの道は、霧が濃くて薄暗い上に、不明瞭(とういうか道は無い)で滑りやすく、疲労で震える足で、右岸左岸を行ったりきたり(こけたり)しながら何とか進むのが精一杯でした。そして最後のS字の谷?は、一歩足を踏み外せば谷底へという(最難関の)岩場で、涙が出そうでした。何回か吠えました 「おやじぃ〜! だましたな〜! だましたな〜! だましたな〜!」 日が暮れる直前に、重たいザックを担いで初めてこのコースを登る人を、大丈夫だからと、こんな谷を行くように勧めた「おっちゃん!」あんたは、山男失格ですで。もし、僕が遭難してたら・・・・・えっ、時間計画を甘く見つもった僕が悪い?・・・・・すみません。。。 結局狼平に到着することができず、わずかに平らな草地を見つけて、そこでテントを張ることにしました(ほとんどビバーク状態)。時間は夜の8時前、何回かこけて、全身傷だらけです。ただし誤解のにないように説明しますと、明るければ、この谷もちょっとスリルがある程度で、逆に素晴らしい渓谷美があり、歩くのはとっても楽しいと思います。(ホントですって!)
20:00〜06:00 テントにて
お湯を沸かして、豚汁とお昼の残りおにぎりで夕食、ご飯を炊く元気はありませんでした。いつもなら、闇の恐怖でなかなか眠れませんが、かなりの疲労と、明日への体力温存のため、あっという間に夢の世界へ旅立ちます・・・・・ZZZzzz・・・・・「テントがビリッと引き裂かれる」夢を見てガバッ!と起床(05:00)。体力は回復してましたv(^^)v。 パンで軽い朝食をとって06:15に出発しますが・・・・
06:30〜35 狼平
あっけないほど、あっさりと狼平に到着。昨日あと10分あれば・・・という距離でした(人生こんなもの)。確かに狼平は明るい場所で、避難小屋も2階建てで立派です。ここに泊まるのであればシュラフだけで大丈夫でしょう。この日の宿泊者は若いグループ(この表現は自分がおっさんになったようで泣けますが)だけで、さわやかに朝食をとっていました。
07:35〜08:25 弥山山頂(奥宮、小屋、八方睨)
狼平から弥山までは、今までの道に比べれば、舗装道路を歩くよう。道を探さなくて良いのがこんなに楽だとわっ(;;) ただし登っているときにはかすかに八剣山が見えましたが、弥山山頂では濃い霧で真っ白でした。この時期、弥山・八剣は晴れる方が珍しいそうで、見晴らし悪い時の八剣山は前回登ってるので迷わずパス(というより元気なし・・・オオヤマレンゲも咲いてないようだし)。弥山小屋前で本朝食をとってから奥駆道をトンネル西口へ下山しました。
08:30〜11:10 奥駆道から行者環トンネル西口へ下山
この奥駆道は以前通ったことがあるだけに、懐かしく思い出しながらを安心して歩けました。弥山川コースでは、すれちがう人は皆無でしたが、ここでは、たくさんの方とすれちがい、弥山から急な下り以外はさすが古道!という感じです(^^)心が洗われます。ただしトンネル西口への分岐からの激下りは、新しく造られた道でもありつらいだけ・・・・時間短縮のありがたい道でもありますが・・・・・。
終わりに
弥山川コースを初めて行くのであれば、早朝に登山口を出発して経験者と一緒に必要最小限の荷物で行くことをお勧めします。地下足袋とわらじのセットがあれば、もっと楽しめます。素晴らしい自然の風景と、厳しい登山道のおかげで、何度も足を止めて一息つきたくなります。初めてであれば(そうでなくても多分)、何度か道を探して立ち止まることになるでしょう。
結局道がみつからなくて岩をよじ登り、川の中を歩き、崩れやすい川岸を藪漕ぎしなくてはならなくなるでしょう(^^;しかし、それに見合うだけのモノは確実に自分に還ってきます。周到に準備して万全の態勢で望めば、名瀑100選の双門大滝をはじめ、数々の個性ある滝と岩峰があなたを優しく、時には厳しく迎えてくれます。残念ながら準備不足のえびちゃんにはあまり微笑んでくれませんでしたが・・・・(^^;
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